第62回東京国際ギターコンクールの感想③
《まえがき》
明けましておめでとうございます。
日頃から閲覧しにきてくれているみなさまありがとうございます。
このサイトは去年の春先からコンクール参加の記録や思い出を残して個人的に後から見返すためと、クラシックギターや音楽について自分なりに勉強して知識を蓄える目的で勝手気ままに始めました。
ですが自分が当初思っていたよりも閲覧数や訪問人数も大分伸びています。
これはコメントなどの直接的な反応がなくとも結構嬉しいことになっております。
別に義務ではないですし、文章が毎回長くなってしまい結構負担になっているところもあるので更新やめようかなーと思ったことは何度もありましたが、上記のような理由もあってなんとか続けております。
今後も色々なクラシックギターのコンクールに出るつもりですので、更新は遅いかと思いますがなんとか報告を続けられたらいいかなと思っております。
というわけで今年もどうぞよろしくお願い致します。
それでは前回、前々回に引き続き今回は昨年12月8日におこなわれた第62回東京国際ギターコンクール本選の感想を書いていこうと思います。
この日は午後一時から開始でしたので前日よりものんびりと昼食を食べてから会場に向かいました。
本選ということで観客の数は前日より随分と増えておりました。
満席というわけではありませんでしたが、座席はほとんど埋まっていたかなと思います。
《本選の課題曲》
まずは各人の感想の前に本選の課題曲について述べていきます。
今回はアコーディオニスト・作曲家のcobaさんが作曲したReturn to Oという作者初のギター作品が課題曲でした。
荘村清志さんから委託された作品らしいです。
やはり純粋なギター演奏家の作品とは性質や趣が違うというか、全体を通して聴いてみるとなんとも不思議な感じがしました。
楽譜の本人の解説によると、調性と無調性を行き来するような曲を意識して作曲されたそうです。
自分はコンクールの一ヶ月ほど前に楽譜を購入したのですが、てっきり参考になるような録音があるのかと思っていたのですが見当たらず。
楽譜だけで曲全体が頭の中でイメージできるような人はいいのでしょうけど、正直時間に余裕もないので通して弾いてみて確認するというのもちょっと無理そうだったので今回はシーケンサーでそのまま愚直に打ち込んでみました。
動画にしてYouTubeの方に投稿しておきましたので興味がある方はどうぞ。
こんな出来でも個人的に一応役に立ちました。
全く知らない曲をいきなり聞かせられても雰囲気しかわからず、何をやってるのかさっぱり分からないので……。
ある程度予習していかないと参考になりませんからね。
とりあえず本選の6人の演奏を聴いた限り明らかに間違いというか変わった演奏をした方はいなかったと思います。
程度の差はもちろんありますが、基本みなさんほとんど楽譜通り忠実に演奏されていたかなと。
ただ逆にいうと、普通すぎて印象に残るような個性を発揮出来ていた人はこの曲ではいなかったと思うのでそこはちょっと残念でした。
まあこの曲だけ特別時間と手間を掛けるわけにもいかないでしょうから仕方がないのかもしれません。
というわけでここからは演奏順に各人の感想を述べていきたいと思います。
ちなみに本選は課題曲と自由曲合わせて大体一人あたり30~40分弱弾きますので演奏者の大変さはもちろんですが、観客も集中して通して聴くのはなかなか大変です。
自由曲も規定に沿って最低3つの時代を満たした曲を弾かなければいけないので、このコンクールが国内では特別視されるのは当然のような気がします。
《各人の演奏の感想》
1.Gian Marco Ciampa
本選のトップバッターは彼でした。
この日はさすがに前日のようなひどい演奏ではありませんでした。
予選のときのあの緊張具合は一体何だったのか気になります。
【スクリャービンの主題による変奏曲/A.タンスマン】
この変奏曲は1971年に作曲されてアンドレス・セゴビアに献呈されたそうですが、演奏や録音はされなかったんでしょうか?
もとになった主題はスクリャービンのピアノのためのプレリュードOp.16-4 変ホ短調からでこちらはセゴビア編曲の録音が聴けますね。とても短い曲です。
変ホ短調ということで楽譜を見ると、主題はそれよりはギターで弾きやすいであろうロ短調に移調されています。
6つの変奏から構成されていて、タンスマンらしいマズルカ風やフーガ風の変奏が聴けます。
曲自体は明るい感じのⅢ以外はちょっと地味めというか暗い感じなので個人的にはそこまで好みではないですね。この曲もタンスマンらしく? あっさり終わるので……^^;
よく分かりませんが審査員の方には受けたんでしょうかね?
講評で梅津時比古先生が「スクリャービンの……」みたいに触れていたので。
この曲についてはジャンさんの演奏は可もなく不可もなくといったところでしょうか。
特別駄目と思うようなところもなければ、すごくいいところも印象に残らなかったので。
【序奏とカプリスOp.23/G.レゴンディ】
近年? なのかどうか分かりませんがこのところレゴンディの作曲した曲はこういう大きいコンクールだと必ず何かしら弾かれているような気がします。
今回も本選では3名がレゴンディの曲を取り上げております。
なのでコンクールなどで聴く機会は比較的多いのかなと思いますが、正直個人的にはそこまで取り上げられるほど好きではありません。
古典派ロマン派の曲を演奏しなければいけない場合ソルやジュリアーニとかだと散々弾かれてきたし、かといってコスト、メルツあたりだと地味すぎるっていう印象があるのでレゴンディなんでしょうか。技巧的にも派手な部分があったりします。
こういうのはレゴンディに限らず流行り廃りがあると思います。
一昔前に現代曲でやたらとブローウェルの作品ばかり勝負曲で取り上げられたのと同じような感じです。
ジャンさんの演奏ではこの曲が一番印象に残りました。
序奏のところはちょっとテンポ速いかなと思いましたが、最後までそれほど崩れることもなく終わりの方の技巧を誇示するようなところでは指がすごく回っておりました。
この曲に関しては自信を持って演奏できていたかなと思いました。
【Return to O/coba(以下課題曲で表記)】
課題曲披露一人目でどうかなということで注目していましたが、ミスは少なめで概ね譜面通りだった印象です。
メモには”最後の方は改善出来る余地あり”と書いてあったがどこの辺りのことだったか思い出せず(すいません……^^;)
【ファンタジー7番P.1/J.ダウランド】
ダウランドのファンタジーでおそらく一番有名な曲でしょうか。
印象的な旋律から始まりそれが順次模倣展開されていく曲です。
自分も練習したことがありダウランドの曲の中でも好きな曲です。
ジャンさんに限らず、ダウランドの曲を演奏するときは最近ですとリュート調弦に合わせるためなのか2フレットや3フレットにカポをして合わせている人がいます。
こういうのは場合によりますが、自分はこの傾向あまり好きではありません。
原曲がギターに全く向いていない調の曲を弾くためなら仕方がないですが、この曲の場合はカポなしならホ長調で演奏できます。決して弾きやすくはないですが音的にはギターに向いている調です。
それがカポを2フレット(今回のジャンさんは2フレットにしていました)にするということは嬰ヘ長調/変ト長調の音で演奏することになります(本当にルネサンスリュートの調弦にするなら3弦をF#にして3フレットにカポのはずなんですが、ハイポジション等の弾きやすさの兼ね合いから2フレットにする人も多いらしいです)
リュートのことはよく分かりませんが、嬰ヘ長調/変ト長調の調弦ってギターに合いますかね?
3フレットカポなら形式的にはト長調になるのでそんなに違和感はない気が……(動画で何人か聴いてみただけの感想ですが)
いずれにしても自分は弦長が短くなって音が弱々しいというか細くなってしまうので好きではありません。
モダンギターの弦長がなぜ650mm前後で制作されているのか、やっぱり奏でられる音に理由があると思います。
ギターとリュートは当然似ているところもありますが、基本的に種類の違う楽器なので何が何でも合わせる必要があるのかなと考えることがあります。
ジャンさんの演奏自体は特に悪くはなかったと思いますが、テンポがゆっくりしっとり目なので特別印象には残りませんでした。
実はこの曲に関しては自分はテンポ速めの方が好みです。
【パーカッション・スタディ第1番/A.カンペラ】
うーん、予選に続き本選でも聴くことになりましたねぇ……。
まあこちらは1番なので2番ではないのですが、傾向はそれほど変わらずといった感じでしょうか。
そもそもこの曲を実際に初めて聞いたのが多分2年前のジャンさんの演奏だったような。
あまりほとんどこういった極端に前衛的な曲に興味関心をもてない自分ですのでなかなかうまい感想が思い浮かばないのですが、おそらくこういった曲を進んで楽しめるという方もいらっしゃると思うのでただただ相性が悪いのでしょう。
ちなみに帰ってから気付いたことですが、ジャンさんが今回演奏した自由曲は演奏順こそ違えど2年前に本選で弾いた曲と全く一緒でした。
2年前の演奏の出来を覚えていれば今回と比較したいところなのですが、さすがにほとんど思い出せません。覚えていることが「うーん、2位になる演奏だったかな?」ぐらいなので……^^;
2.Carlotta Dalia
【涙の賛美D711/F.P.シューベルト(メルツ編)】
2次予選でDaniel Valentin Marxさんが弾いたのと同じですね。
それほど頻繁に取り上げられる曲ではないとは思うのですが、このコンクールで2度取り上げられたのは何かの偶然でしょうか。
演奏については特に問題なく優雅な演奏だったかなと思います。
【課題曲】
この方のラスゲアードは雑に弾いたり団子になったりせず他の方よりもきれいな印象でした。全体的にも丁寧な感じです。
【悲歌/L.ブローウェル】
この曲はイン・メモリアム・トオル・タケミツの副題の通りブローウェルが武満徹の死に際して作曲されたそうです。
武満徹の曲のような雰囲気を若干感じるところもありますが、やはり基本的にはブローウェルの曲だという印象です。
所々激しくなる部分もありますが基本的に題名の通り物悲しくなるような静かな感じの曲ですね。
自分は福田進一さんの武満徹の曲がまとめて入っているCDの演奏ぐらいでしか聴いたことがなかったのでダリアさんの演奏がいいのかよく分かりませんでしたが、大きく崩れるようなところはなかったと思います。
【BWV1004無伴奏ヴァイオリンパルティータ2番よりシャコンヌ/J.S.バッハ】
ダリアさんはこの大曲をプログラムを飾るため最後に持ってきたようでした。
ただこの曲で締めくくるのはなかなか難しいようです。
審査員だけでなく観客の中にもこの名曲を聴き込んでいる人は相当いると思いますので、そういった人たちも含めて皆を納得させるような演奏をしなければいけないというのは、このレベルの人であっても相当な重圧があるようです。
本来ならこの曲を弾きこなすのに十分な技巧は持ち合わせていると思うのですが、全体的にかなりのミスが見られました。
途中で止まるまではいきませんでしたが、多くは何でもないイージーなミスで前半から曲が進むにつれて徐々に増えていくような印象がありました。
後半もリズムがよれているというか、拍の取り方が変に感じるところがありました。
演奏は最後まで弾ききりましたが、去り際の様子は自分自身に納得できないようなちょっと悔いの残る表情を浮かべていたのが思い出されます。
それ以外で気になったのは演奏中の髪の毛でしょうか。
弾いているときに何度か長い髪が前方に垂れてきて右手の辺りに掛かりそうで見ていて心配になりました。
まあ髪の毛が原因で演奏に支障をきたしても本人の責任ですが、そこまで気にかけられないほど余裕がなかったのかもしれません。
ここで一旦休憩でした。
本選は長丁場のためか二名ずつの演奏です。
3.Pietro Locatto
前日の予選は6位でなんとか滑り込んだ印象のロカットさん。
彼は課題曲から弾き始めました。
【課題曲】
全体的に安定志向の演奏でしょうか。
ただ細かいミスというか、何箇所か音を取り違えていたような気がしました。
【エレジー/J.K.メルツ】
メルツといえばやはりハンガリー幻想曲が国内外問わず断トツに演奏されるような気がしますが、このエレジーも演奏する人は多い曲だと思います。
題名の通り全体的に哀愁漂うメロディーが印象的で、緩急のバランスがよくいい曲だと思います。
ロカットさんの演奏は比較的手の内に入っているような感じでした。最後までしっかりと演奏していたと思います。個人的にアルペジオの速いところなども流れるような雰囲気があってよかったです。
予選のときのカンペラもそうでしたが、ロカットさんは多分こういう感じの曲が得意なんでしょうね。
【バレンシア組曲/V.アセンシオ】
ビセンテ・アセンシオはナルシソ・イエペスの先生だそうで「内なる想い(Collectici Intim)」の作曲者で有名ですが、このバレンシア組曲の名前も時々目にします。
ⅠPreludi、ⅡCançoneta、ⅢDansaの3楽章から構成されています。
実際の演奏で聴くのは初めてでしたが、曲の感じはどことなく内なる想いに似ているところがあります。
今回の演奏は悪くはなかったと思うのですが、この曲は全体的に地味というかあまり印象に残りませんでした。
【ゴヤによる24の狂詩曲よりNo.18/M.C=テデスコ】
こちらも前日のダリアさんの演奏で聴いたのと同じ曲です。
こちらは人気もあるしよく弾かれる曲なので被るのはまあ分かるのですが、こういう頻繁に弾かれる曲は難しくてもちょっとアピールしづらいのかなと思ったりもします。
この曲も演奏自体は特に変わったところはないというか、やはり印象に残らない感じでした。
【トッカータBWV914/J.S.バッハ】
ロカットさんの今回のプログラムで目を引くのはやはりこの曲でしょうか。
自分は知らなかったのですがこの曲をアレンジしてギターで弾く人はそこそこいるみたいです。有名どころだとステファノ・グロンドーナが弾いていて楽譜もあるそうです。
バッハのBWV910~BWV916の7曲のトッカータはそれぞれ組曲のように様々な楽章を持ち
必ずフーガが途中や終わりに置かれていますが、このBWV914も導入部、4声部のアレグロ、アダージョ、フーガで構成されています。
ホ短調ということもあってかギターでも原曲をかなり再現できるみたいですね。
前半の3つのセクションは多少ミスはあれどもそれほど問題なさそうだったのですが、やはり後半最後のフーガが厳しそうでした。
そこでちょっと左手が間に合ってないようで、余裕の無さが出てしまったのが惜しかったです。
でも決して悪い演奏ではなく、最後にこの難曲を持ってきたのは挑戦的で称賛したいなと思いました。
4.Damiano Pisanello
【ファンタジア/G.ホウェット】
グレゴリオ・ホウェット(Gregorio Howet,Howett,Huewet,Huetなど表記が色々あってよく分かりません)は1550年~1616年頃に活躍したフラマン人(なんでも北フランスやベルギーに起原をもちオランダ語を話すゲルマン民族とのこと)のリューティストみたいです。
ざっと調べたところジョン・ダウランドよりも先輩格に当たる人のようで「最も有名なアントワープのグレゴリオ・ホウェット」などと言及しているらしく多分影響があるのでしょう。
このファンタジアという曲は今回初めて聴きましたが、メロディーや構成、雰囲気がジョン・ダウランドのファンタジーそっくりで驚きました。
どうも稲垣稔さんやジュリアン・ブリームがCD録音しているようなのでそこそこ知名度はあるのでしょうか。機会があれば聴いてみたいです。
今回の演奏もこれぞルネッサンス音楽といった感じだったので良かったと思います。
【課題曲】
この人の演奏で気付いたことは、29小節目から何度か出てくる三連符の印象的なフレーズがありそれは最初に1弦9フレットのド#を全音符で伸ばします。他の人は大体2拍ぐらいしか伸ばさないのですが、この人はきちんと全音符で持続しておりました。
細かいところかもしれませんが、こういうのがちゃんとしていると印象に残ります。
【序奏とカプリスOp.23/G.レゴンディ】
ピサネロさんも古典派ロマン派の曲でレゴンディを選択してきました。
一人目のジャンさんと比べると序奏のところはゆったりとしていてこちらのほうが好みでした。ただ序奏が終わった中盤以降は丁寧なのですが、盛り上がるところや技巧を誇示するようなところはおとなしい印象がありちょっと物足りない気がしました。
多分曲が被らなければそういう印象も持たなかったのかもしれませんが、これがやはり比較されてしまうコンクールの難しいところなのかもしれません。
【ソナタ第3番/D.ボグダノヴィッチ】
プログラムの締めはセルビア生まれの演奏家兼作曲家のデュージャン・ボグダノヴィッチのソナタ第3番でした。
この曲は以前第58回大会で優勝したザビエル・ジャラが本選で弾いていたのを思い出します。
4楽章のソナタですが合わせて10分もないのでそれほど長い曲ではありません。
ですが全体的に独特でなかなか掴みどころの難しい現代曲です。
YouTubeに譜面付きで動画が上がっていますが、自分は何度聴いても作品の良さというかどの辺りに魅力があるのかまだ理解できていません。
展開に緩急はあれどもひたすらに重たい雰囲気が続く曲だと思います。
第4楽章からはかなり技巧的になって派手目に盛り上がって終わっていくのですが、いわゆる爽快感とか高揚感みたいなものは全くありません。
最後まで淀んでいるような、気付いたら「あ、終わったんだ」という感じです^^;
なので今回の演奏も頑張って最後まで聴いみても音が流れてくるだけで音楽的には何も響いてくるものが感じられず、ただ演奏頑張ったんだなという感想しか残らなかったのですが、それが現時点での自分の素直な気持ちになります。
ここで2度目の休憩。
だんだん疲れて演奏中にうとうとしてくる頃合いなのですが、気を取り直して残る二人の演奏に集中しました。
5.Carlo Curatolo
【森に夢見る/A.バリオス・マンゴレ】
バリオスの曲の中でも比較的知名度があると思われるトレモロが印象的な曲です。
古典派ロマン派の曲でこの曲を選択したみたいですね。
個人的にバリオスは生きていた時代(1885-1944年)からすると近代の音楽家のイメージが強いのですが、この曲は1918年ぐらいに作曲されたらしい? ので規定(1750-1920年まで)には問題ないみたいです。
カルロさんの演奏や音は予選のときに聴いたときも感じたのですが、どちらかというと正統派な感じで個人的に好印象です。
この曲もきれいなトレモロを聴かせてくれて前半はしっとりと、後半からは迫力も出てきてよかったと思います。
【課題曲】
ミスが少なく模範的な演奏だったと思います。
丁寧さという点では彼の演奏が一番良かったかもしれません。
【南のソナチネより第2,3楽章/M.M.ポンセ】
第1楽章は時間の関係か弾きませんでしたが、2曲とも安定した演奏だったと思います。
【ソナタK213/D.スカルラッティ】
この曲は今まで個人的に馴染みがありませんでした。
ギターの編曲演奏はジョン・ウィリアムスの演奏が有名なのでしょうか。
原曲がニ短調ということもあってギターで弾くのにも向いてそうです。
カルロさんの演奏で気になって、帰ってきてから色々ネットの演奏聴いているうちに好きになりました。ちょっと弾いてみたい気もしますが、市販の楽譜は出ていないのでしょうか?
【ソナタOp.77より第4楽章/M.C=テデスコ】
ボッケリーニ讃で有名なテデスコのソナタから第4楽章だけを弾きました。
全楽章通して弾く人もそこそこいると思いますが、各楽章単独で弾くときはやはり第1楽章と第4楽章が多い気がします(この曲は第2,3楽章も弾こうとすると途中で調弦2度変えないといけないので、そこはちょっとめんどうですね……)
この曲も大きな破綻はなく最後まで安心して聴くことが出来ました。
カルロさんの演奏はどの曲もミスがほとんどなく、隙なくまとまっていて非常に良かったです。
おかげで不満な点がほとんどないので、他の方よりも若干感想が少なめになってしまっております^^;
6.Ji Hyung Park
【パルティータ第2番BWV826よりシンフォニア/J.S.バッハ】
バッハ好きの自分としてはロカットさんのBWV914と同様にこちらもプログラムを見たときから注目していました。
パルティータといえばバッハの鍵盤楽曲の中では平均律同様かなり重要な位置を占める組曲です。バッハの楽曲の中では最初に出版されただけあってかなりの力の入れようで、各組曲を構成する楽曲の名称もバッハの他の組曲ではあまり使われていないもので構成されていて独特です。
パクさんが今回演奏したのはTristan Manoukian(あまり詳しい経歴はよく分からなかったのですが、フランスのギタリストでルネ・バルトリやアルベルト・ポンセに師事していたそうで、パリ国立高等音楽の卒業生で今はそこで教えているみたいです ※参考にした文章が変なので間違っているかもしれません^^;)という方の編曲でジュディカエル・ペロワに献呈されました。
これはペロワ本人が録音してCDを出していますし、楽譜も出版されています。
原曲はハ短調ですがこれはニ短調に移調しているようです。
楽譜がないのでどのくらい原曲を再現しているのか分かりませんが、ペロワのCDの演奏だとほとんど原曲通りに聴こえます。
パクさんの演奏は予選の時に聴いたような気迫のこもった力強い音で弾き始めました。
ただちょっと極端なのでぶっきらぼうに聴こえなくもないです。
始まりはGraveの指示で”荘重に”ぐらいの意味でしょうから、個人的にただ力任せに弾くのは違うと思います。
Andanteに入ってからは静かでなんとも物哀しいような旋律が流れていきますが、途中ちょっとミスがあったのは惜しかったです。
そして後半Allegroに入ってからバッハのお得意であろう快速の2声のフーガ部分は凄かったです。
運指的に苦しそうなところは多々ありましたが、そこを怒涛な勢いで弾き倒していきました。これは賛否あれどもインパクト自体はかなりあったんじゃないでしょうか。
【イベリアよりエル・プエルト/I.アルベニス】
なぜか今年(正確には去年ですが)は縁があるのか、本来は独奏ギターで弾かれるのが珍しい(?)はずのこの曲を実演で聴くのは3回目です。
イーストエンド国際でホルヘ・カバジェロさん、スペインギター音楽コンクールで田中春彦さん、そして今回。
まず気になったのが編曲譜について。
プログラムには(arr.J.Ribu)と書いてあるのでどういう人なのか検索してみたところ全く引っかからない。
おかしいなと思い色々調べてみた結果J.Ribuというのは間違いで正しくは「J.Riba」でした^^;
Javier Ribaはスペイン・コルドバのギタリストの方です(詳しくはWikipediaのページを参照してください、なんだか色々書いてありました)
パクさんはその方が編曲した楽譜使っているみたいですね(ちなみに同じイベリアのエヴォカシオンも編曲しているようで、パクさんはそちらも弾いています)
ただ本選の演奏聴いたときも感じたのですが、こちらの編曲はカバジェロさんの演奏しているものと比べてしまうと若干物足りなさを感じてしまいます。
カバジェロさんの方はまるでピアノで弾いているのかと錯覚するほど迫力があったので、改めてとんでもない実力の程が伺えますね。
それでパクさんの演奏なんですが、この曲はちょっとまずかったかなと思いました。
シンフォニアで掴んだ勢いのまま行くのかと思ったのですが、入りの所でかなり大きなミスをしていたような気がします。
中間でもミスが多く、音を外していました。
とにかくこの曲は最期までどこか微妙な感じで立て直せなかったようです。
【課題曲】
エル・プエルトの失敗に引きずられないようにしたのか、迷いを断ち切るようにこの曲もやりすぎじゃないかというほどの豪快な弾き方で演奏していました。
随所に出てくるラスゲアードを含めて、本選の6人のなかで迫力は一番だったと思います。
しかしながらもったいないというかイージーなミスはやはり見受けられ、雑なところは依然変わらずといった感じでした。
興味深いのはこの曲は後半に入る直前静かにすうっと消えるようなところがあるのですが、そこだけは理想的じゃないかというぐらいすごい良かったです。
ですがその次の、テンポを速めて弾き出す立ち上がりの所でまたもミス^^;
聴いていて波があるというか、なぜ安定しないのか不思議に感じました。
【エキノクス/武満徹】
この曲も荘村清志さんが武満徹さんに委託して作ってもらった曲です。
確か荘村さんの活動25周年の記念に合わせてでした。
5分ほどの曲でそれほど長くはないですが、6弦をE♭、2弦をB♭に変則調弦するのが特徴的です。
パクさんの演奏はテンポが少し速い入りでしたが、それはあまり気にならず。
またこの曲に関しては別段ミスも少なかったと思います。
ですが聴いている時にプログラムの中で一番違和感を覚えた曲でした。
普段聴いているエキノクスとまるで違う曲に聴こえたのです。
演奏自体は特に問題ないように見えたのですが、とにかく音楽としては無味乾燥したものだったかなと。
原因ははっきり分かりませんが、おそらく演奏するにあたって楽譜をそのままなぞって音を出しただけのような気がしました。
やっぱり現代音楽といえども音楽なのですから自分は何かしら感情を込めて弾かなければいけない気がしますし、惹き込まれるような雰囲気を醸し出して欲しいです。
その辺りが世の中で一流とされる演奏家との違いではないでしょうか。
【ベッリーニのカプレーティとモンテッキの主題による変奏曲/G.レゴンディ】
本選のラストを飾るのは本日3人目のレゴンディ。人気ですね。
結局今回の本選ではレゴンディが3人、メルツが2人、バリオスが1人と古典派ロマン派の曲では全員がロマン派の曲を選択しました。
これはちょっと寂しいというか、一人ぐらい変わった曲でなくとも古典派の曲を弾いてくれてもいいような気がします。
この傾向は今回だけではなく以前からこんな感じらしいので、それならば逆に一人だけしっかりと古典の曲を披露することができれば観客や審査員の印象に残りそうな気もするのですがどうなんでしょう。
さてヴィンチェンツォ・ベッリーニが作曲したオペラ「カプレーティとモンテッキ」はざっくりまとめると敵対しているカプレーティ家のジュリエッタとモンテッキ家のロメオの二人を中心にした恋愛悲劇です。
ようするにあの「ロミオとジュリエット」ですね。
ただ有名なシェイクスピアの戯曲とは直接関係なく、結末自体は大体同じ感じですが内容は結構違っているみたいです。
レゴンディが題材にしたのはオペラの第1幕の第1場でジュリエッタの婚約者テバルドが歌う"L'amo tanto, e m'e si cara"というアリアです。
イタリア語は全く分かりませんので英語に翻訳してもらうと"I love her so much / She is so dear to me" なるほど、これなら理解できます。
初めて聴き比べたときは「なんか全然元のアリアのメロディーが出てこないぞ……」と思っていたのですが、どうも序奏? がかなり長く3分の1ぐらいが過ぎてからようやく原曲の明るい印象的なメロディーが出てきます。
こういうのはやっぱり手元に楽譜がないと分かりづらいです。
ただ現在国内ではなかなか手に入れにくいみたいですね、そうなると海外から取り寄せするしかないのかもしれません。
パクさんの演奏はこの曲については比較的安定していたと思います。
昔から弾いているみたいなので得意にしている感じです。
最後派手なところも勢い落とさずに締めくくれたようでした。
長くなりましたが各人の感想は以上のようになります。
《本選結果について》
採点含めた総合的な結果は以下の通りでした。
1.Ji Hyung Park(138.5点)
2.Gian Marco Ciampa(134.5点) ※2位と3位同点ですが増沢方式で決定
3.Damiano Pisanello(134.5点)
4.Carlo Curatolo(133点)
5.Pietro Locatto(131.5点)
6.Calotta Dalia(119点)
個人的に順位つけるとしたら
1.Carlo Curatolo
2.Ji Hyung Park
3.Gian Marco Ciampa
4.Pietro Locatto
5.Damiano Pisanello
6.Calotta Dalia
のような感じでしょうか。
やはりプログラムを通して安定して真当な音楽を聴かせてくれたので、もし1位を決めるのならカルロさんがよかったと思います。
ただ結果的に4位だったのはこのレベルのコンクールとしてはあまり難曲には挑戦しなかったことと、ポンセとテデスコが近代曲で被ってしまったことが要因かもしれません。
近代曲は弾くならどちらか一曲ぐらいにして、予選で披露したサントルソラのソナタなどをまとめて弾いたほうが審査員の印象にも残ったのではないかなと思いました。
今回見事優勝したパクさんですが、たしかに技巧やインパクトは圧倒的でした。
でもどうしても曲によってはミスがかなり目立つのと音楽表現に疑問を感じたので、総合的には2位ぐらいじゃないかなと思いました。
結果的に今回はインパクト重視で挑戦したのがうまくいった形になりましたね。
個人的予想で3~5位の三人はなかなかはっきりと決めるのが難しかったです。
実際の点数もほとんど差がなかったですし。
結局3人の披露したそれぞれの決め手になるような大曲で判断しました。
今回は残念ながら6位に終わってしまったダリアさん。
やはり他の方よりもプログラムの構成曲が弱く感じたのと、シャコンヌの失敗が痛かったかなと感じました。
来年以降も出場するとしたら頑張って欲しいと思います。
あと今回の本選の演奏を全員分聴いてみて、なぜ前回1位が出なかったのかちょっと分かった気がしました(ちなみに前々回は観戦しましたが、実はその時も個人的には1位を出さなくてもよかったんじゃないかと思っておりました)
演奏レベルが低いからではありません。むしろ演奏のレベル、技巧的なものは年々どんどん高くなっていると思います。
結局のところ理由は単純で『誰にでも分かるようなずば抜けた完成度と圧倒的なインパクト』
この両方を兼ね備えている人がいないからです。
上で述べたことと同じになりますが、もう一度わかりやすいように個人的予想の上位2人を例に出します。
・カルロさんは全体的な完成度は高いが、インパクトにはやや欠ける。
・一方のパクさんはインパクトは強いが、好不調に波があり安定感に欠ける。
なので今回も1位が出なかったとしても不思議ではありませんでした(実際過去に2度ほど2年連続で1位が出なかったことがあるみたいです)
こういうレベルの高い国際コンクールでは、完璧ではなくともそれに近いものを持ち合わせている人をぜひ1位に選出してもらいたいものです。
今回の審査結果で感じたのは以上のようなところでした。
来年は是非ともそういう人の演奏が聴けるよう楽しみにしております。
《終わりに》
お正月は比較的休みが取れたので今回も遅くなりましたがなんとか感想を仕上げることが出来ました。
勝手気ままとはいえあまり変なことは書けないなーと、自身の無学無教養ぶりが露呈されることとなり毎回下調べや確認に手間取っております。
文章もなるべく読みやすいように推敲しているつもりなんですが、変なところとか使い方が間違っているところたくさんあると思いますので気付いた方ぜひ教えて下さい^^;
でもこれも勉強のうちですよね。おかげで最近はほとんどギターに触れておりません。
ちなみに今月はもうすぐ1月19日に第13回ギター大好きみんな集まれギターコンペティション北関東地区大会がありますので、まずはそちらに向けて頑張ろうと思います。
あと春以降のコンクールに参加するなら課題曲も録音しないといけませんね。
うーん大変ですね、どうしようか迷います。
何れにしても今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。
最後まで読んで下さったみなさまいつも本当にありがとうございます。
それでは失礼致しますm(_ _)m
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