第26回埼玉ギターコンクールの感想
《まえがき》
前回の更新から久しぶりのブログ更新です。
まあ特別書くネタもないわけで、ほったらかしにしておりました。
今年2019年は前半にバッハ国際ギターコンクールとイーストエンド国際ギターコンクールに参加。
8月には日本ギターコンクールとアマチュアギターコンクールがあり一時期参加を検討しましたが今回は両方とも見送りました。
理由はまずアマチュアギターコンクールは日程的にちょっと都合が悪くてやめました。
もう一つの日本ギターコンクールは一次予選課題曲のF.M.トローバのアルバーダを録音してCDに焼き、申込用紙も準備するところまではいきました。
今年の日本ギターコンクール・オヌール部門は二次予選課題曲がヴィラ=ロボスのエチュードNo.3と本選の課題曲がバッハのBWV1006aのプレリュードだったので両方とも弾いたことがあるのでなんとかなるかもと楽観的だったのですが、ブログで報告した通り5月のイーストエンド国際で全然駄目だったのでこれはやはり無謀だなと、ただの大阪観光になりそうだったのでやめておきました^^;
というわけで夏の間は今年後半の埼玉ギターコンクールとスペインギター音楽コンクールで取り上げる曲を中心に練習をしておりました。
さて、本題の9月23日にさいたま市民会館うらわにて行われた第26回埼玉ギターコンクールの感想です。
埼玉ギターコンクールは今回で2回目の参加です。
去年は都合が悪くて参加しませんでした。
自分にとっては二年前の第24回に参加したのが生まれてはじめてのコンクール参加だったので、色んな意味で思い出深いです。
今年のコンクールの課題曲はタレガのラグリマでした。
クラシックギターを弾く人なら誰でも演奏したことがあるんじゃないかというぐらいの名曲ですね。
第24回の課題曲はソルのOp.35-17、去年の課題曲は同じくソルのOp.31-4だったのでそれらから比べると技術的には大分易しめではないでしょうか。
今回参加した人たちも、ほとんどの人がまずまずの演奏ができていたんじゃないかと思います。
ただやはり審査員の先生方からは不満な点や改善してほしい点などを色々述べられていて、自分も含めて改めて気をつけなければいけないなと感じました。
特に埼玉ギターコンクールでは課題曲と自由曲の点数の配分が5:5らしいので、課題曲は甘く見ないで確実に演奏してほしいとも仰っていました。
後述しますが、最終的な順位もその課題曲が決め手になったようですね。
それではまず自分の演奏の感想からです。
前回豊洲に行ったときは足を痛めて本当にひどい目に会いましたが、今回は体調の方は良好でした。
当日も雨が心配だったのですが、朝には止んでいたので助かりました。
地元の群馬からは隣県なので個人的に一番近いコンクールになるんでしょうか?
まあそれでも会場に着くまでに2時間近く掛かりますが、はるばる遠方から参加してきている人も多いので贅沢なことは言えないでしょう……^^;
埼玉ギターコンクールはテープ審査や予選などないため、参加者全員がステージに上って演奏できます。
毎年課題曲+自由曲(7分以内)の組み合わせみたいです。
応募する前に今回の自由曲は何にしようか悩んだのですが、10月のスペインの方で今まで弾いてこなかった難しい曲を選ぼうと思ったので、埼玉では以前からそれなりに弾き込んでいる曲にしました。
二曲取り上げることにして、一曲目は個人的に昔からよく弾いていて大好きなバッハのリュート組曲第4番BWV1006aからプレリュード。
この曲だけだと時間的に余裕がありもったいないかなと思い、二曲目はこちらもお気に入りのソルのエチュードOp.6-6(後半繰り返しなし)を選びました。
2年前に初めてこのコンクールに出たときは頭が真っ白になり、指の震えが止まらずどうにもならなくなりました。普段の練習の時の10分の1も発揮出来なかったと思います。
演奏も途中でつっかえるどころか止まってしまうことも多くて、今思いだしてみてもよく最後まで弾けたよなぁ……ということぐらいしか浮かびません。
それから2年経ってどうなったかといいますと、自分としては少しはましになったのかなと思います(他の人からはどう映っているのかはわかりません)
この2年の間に経験を積もうと思い色々なコンクールに出てみたことが徐々に影響しているのかもしれませんし、前回のコンクールの直前に思いついた舞台上での緊張を和らげる対策の効果が今回もあったためかもしれませんが、以前よりは緊張しなくなったと思います(もちろん完全になくなったわけではありませんが)
少なくとも頭が真っ白になって自分が何をしているのか分からない最悪の状態にはならなくなったと思います。
一曲目の課題曲のラグリマは演奏の善し悪しは分かりませんが、自分的には最初の一音から思い切りよくいけたかなと思います。一箇所だけちょっと音がつまってしまったようなところはありましたが、それ以外はほぼ家で練習している通りに弾けましたのでこの曲に関しては手応えがありました。
続く二曲目のBWV1006aのプレリュード。
この曲からぐーんと曲の難易度が上がります。
自分は独学なので近年までまったく知らなかったのですが、この曲はギターの曲としては快速にきちんと演奏するのはかなり高難度の部類に入るらしいです。
少なくともアマチュアの人が発表会などで演奏するのは無謀だとかなんとか……^^;
まあ確かに上で述べた日本ギターコンクールの本選や海外のそこそこのコンクールでも課題曲に選ばれるような曲なので難しいんだろうなーとは思いますし、実力がはっきり分かってしまうんでしょう。
家で練習しているときは通しでも問題なく弾けている(と思っているだけかもしれませんが……)はずなんですが、本番だと普段なんでもないところでもミスをしてしまうし、指が追いつかないこともしばしば。ひょっとしたら一流のプロの方の演奏を参考してしまうあまりに、テンポが速すぎるのかもしれません。
この曲をまともに弾ける日がくるのかは分かりませんが、大好きな曲なので今後も諦めずに取り上げていこうかなとは思います。
最後に三曲目のソルのエチュードOp.6-6です。
この曲もプレリュードほどではないと思いますが、問題なく弾くのはかなり難しい曲ですね。というのも以前参加したバッハ国際ギターコンクールの二次予選の課題曲になっていたのですが、みなさんかなり苦戦していました。
とりあえず今回の自分の演奏ではプレリュードよりはましだった気がします。
この曲もまだまだミスが多いですが、いつか満足な演奏ができるように頑張りたいなと思いました。
あと参考までに今回の演奏の他人からみた評価です。
といっても審査員の先生方の評価ではありません。
今回はうちの父親が一緒に来たのでその感想です。
本当は審査結果が発表されたあとの懇談会に参加して色々聞いてみたほうがいいのでしょうけど、次の日自分は仕事ですし、父が疲れたというので早々に帰りました^^;
で次の日実家で改めて聞いてみたところ、「全体的に思っていたよりもよかった」と言われました。
おや? これはちょっと意外でした。
正直もっとボロクソに言われるのかと思っておりました。
いつもならダブルトップのギター使っているのに音量が全然出てないだとか、全然音楽になっていないだとか延々愚痴と文句が続くのですが、今回はそれはなかったです。
ただ今よりも上位を目指すならミスはもうちょっと減らさないと駄目だ、というのははっきりと言われました。
あとは他の人に比べたら今回は音が出ていたというので、そこはちょっと自信が付きました。でもそれくらいで満足しては駄目でしょうけど。
ではここからは他の方の演奏の感想などについて述べていこうかなと思います。
まず今回は全員の演奏は聴けておりません。
自分の順番は一部の8番目だったのですが、それより前の人の演奏は全く聴いてません。
自分の番が終わったあとでコンサート室に入れたのが、10番目の古山さんの演奏から。
一部はそこから最後まで聴きました。
その後20分休憩があり、父と昼食を取りました。
それから戻ってきたのは15番目の平山さんの演奏からです。
その後は最後の方まで聞くことが出来ました。
今回は人数が多いので気になった方のみなるべく簡潔に書いていきます。
第一部
・7番目 久保田尚夫さん。
演奏(曲はバーデンジャズ組曲)についてはわかりませんが、今回父が聴いた中では一番ギターの音がいいと言っていました。多分河野ギターのマエストロなんでしょうか?
ちなみに父はいつもスプルースの音のほうがいいと言います、特にコンサートホールで聴くならと。
自分は今まで自分で弾いてスプルースの音にピンと来たことがありません。
やはりシダーの明るい音が好きですね。
第二部
・13番目 西川知ひこさん。
第二部の最初に弾いた方なので自分も父も演奏は聴けていないのですが、審査員の先生方の講評で入賞は出来なかったが「ギターのことがすごくよく分かっている演奏」だったと協会のサイトでは発表はされていませんが、特別賞? みたいなものを頂いておりました。
どんな演奏だったのか気になりますね。ちなみに曲はブローウェルの舞踏礼讃でした。
・18番目 近藤勲さん。
色んなコンクールでも名前を見かけるベテランの方です。
曲はバッハのBWV998のフーガを単独で弾きました。
聴いていて派手さみたいなものはありませんが、すごく丁寧で落ち着いているなと感じました。
個人的に心地の良い演奏で、終わったときには順位はわかりませんが多分入賞できるだろうなと思いました。
・20番目 市川宏さん。
ディアンスのサウダージ第3番を演奏しました。
講評で高木理事長の一押しの人でした。
理事長は入賞できると思っていたみたいですが、残念ながら点数が伸びなかったみたいです。
自分は曲自体が好みでないのであまり印象に残っていないのですが、たしかに演奏自体は悪くなかったかなと思いました。
・21番目 木下敏夫さん。
曲はアルベニスのグラナダです。
うちの父が印象に残ったらしく、よかったと名前を上げておりました。
曲が父の好みなのもあると思います。
・23番目 渡邊美保子さん。
曲はテデスコのタランテラです。
同じくうちの父がよかったと名前を上げていた方です。
というか今回の中では一番お気に入りだったのかもしれません。
技術的に凄いというわけではないのですが、リズム感テンポ感がかなり優れているなと自分も聴いていて感じました。
講評でも個別に名前を挙げられていたので、審査員の方々の反応も良かったんだと思います。
・24番目 渡邊洋邦さん。
曲はトゥリーナのセビリャーナです。
ギターの講師をしている方のようでプロの方のようです。
やはり技術的に安定していて、最後まで崩れること無く弾いておりました。
ただこの曲は全体的に暗いというかスペインの光と影の影の方を感じさせる曲だと自分は思っているので、最初の入りのラスゲアードのところなどは渡邊さん含めて結構派手に弾く人が多いと思うのですが、個人的には抑え気味に弾くほうが好みです。
この方も多分入賞するだろうなと聴き終わったときに感じた方でした。
第三部
・29番目 中島健哉さん。
曲はブローウェルのソナタからパスキーニのトッカータを弾きました。
今回参加された方の中では一番技術的に高いものを持っているなと感じた方です。
音の粒立ちもはっきりしていて誤魔化しも無く、この難しい曲を淀みなく弾いていました。
ですが手放しで褒められるかというとそうでもなくて、音楽的にはやはりなにか足りないなとも感じる演奏でした。
後述しますがその辺のことで審査員の先生方の中でもかなり意見が別れたみたいですね。
でも演奏が終わったときには多分一位を取りそうだなとは思いました。
・33番目 大貫淳也さん。
曲はポンセのソナタ・クラシカの第4楽章アレグロです。
去年も入賞しているまだ若手の方のようです。
音大に通っているようで、しっかりとした丁寧な演奏に感じました。
ただ見方を変えるとこじんまりとした演奏にとどまっている感もあるので、年齢を考えたらもっと挑戦的な演奏も必要なのではとも思いました。
あと4楽章のアレグロだけだと3分ちょっとと少し短いような気がするので、もう一曲ぐらい弾いていたらもっとアピールできたと思います。
・36番目 川島洋介さん。
曲はトローバのソナチネ第1楽章です。
川島さんもギター教室の先生でプロの方でした。
川島さんも色んなコンクールで名前をお見掛けしていて、埼玉ギターコンクールでは計3回2位になっているようで、去年一昨年と2年連続で2位になっている方です。
演奏の方はさすがに落ち着きがあって、技巧を誇示するような感じではありませんが、今回一番歌心があって暖か味のある演奏でした。
川島さんが最後の演奏だったわけですが、その前に中島さんや渡邊洋邦さんの演奏を聴いていたので三位以内には入れそうだけど一位はどうだろうなというような気持ちで結果発表を待ちました。
結果発表の前に去年一位だった高橋力さんの演奏がありました。
15分ほどの持ち時間でしたので、ソルの魔笛の主題による変奏曲とタレガのアラビア風奇想曲のお馴染みの2曲を演奏してくれました。
高橋さんもギターの講師しているらしく、やはり2曲ともしっかりとしたお手本になるような演奏を披露してくれました。
ゲスト演奏が終わった後しばし休憩時間があり審査結果の発表になるはずでしたが、今年は意見がなかなかまとまらなかったらしく結構遅れました。
待つこと数十分、ようやく準備が整い結果発表。
もうすでに公式でも発表されているのでいまさらなんですが、一応念の為。
1位 中島健哉さん。
2位 川島洋介さん。
3位 渡邊洋邦さん。
4位 箭田昌美さん。
5位 大貫淳也さん。
6位 近藤勲さん。
となりました。
詳しい点数はまだわかりませんが、個人的に審査結果と講評は概ね納得いくものでした。
ここからは審査の結果と講評に関することについて感じたことを書いていきます。
主に中島さんと川島さんの差というか評価について。
これが審査の発表が遅れた理由なんでしょうか。
曲自体の難易度は置いておきますが両者の自由曲を比べてみると、まずパスキーニのトッカータを弾いた中島さんの方が技術的には優っている気がしました。
ただどうにも演奏が無機質的だなという印象が強かったです。
中島さんが講評で名指しされたわけではないのですが、ある先生が「現代曲とはいっても音楽なのだから響きを重視するのもいいけれど、歌心をもって演奏して欲しい(意訳)」といったようなことを仰っていました。
これには同感です。
今回のコンクールでは全体の4分1ぐらいの方たちが年齢を問わず現代曲に分類されるであろう曲を演奏していて結構多いなという印象でした。
しかしながらその中でこれは! といった感じで惹きつけられる(自分があまり現代曲に関心がないのもあると思いますが)ような演奏には出会えませんでした。
やはりそれっぽく現代曲を弾いたからといっても、単純に評価が有利になるようなことはなさそうです。
一方の川島さんは上でも書きましたが、聴衆に聴かせるという表現力の点では中島さんよりも良かったと思います。
なので自由曲だけでは優劣が判断できなかったんでしょうか?
結局順位の決め手になったのは課題曲の出来ということに。
中島さんがラグリマを滞りなく弾いていたのに対して、川島さんはミスではないのでしょうけど少し怪しい(?)ところがあったのでそこで決定になったそうです。
講評でもそれが大変惜しいと言われておりました。
ラグリマが問題なければ一位は川島さんになっていたようですね。
この結果に、休憩中いつの間にか川島さんと会話して仲良くなっていたうちの父も頭を抱えて残念がっていました^^;
こうして川島さんはなんと三年連続の2位に!(これはこれですごい)
何れにしても入賞したみなさま、おめでとうございました。
最後に今後の課題というか目標について。
今回参加してみて振り返ってみると、一つ疑問というか気になったことがあります。
舞台に上がっても緊張をほどほどに抑えられて一曲目のラグリマはほぼ普段どおりに弾けたのに、続く二曲目、三曲目はどうしてうまくいかなかったのか。
曲の難易度が全然違うじゃないかという声が聞こえてきそうですが……確かにそうなんです。
プレリュードとエチュードOp.6-6はラグリマよりも難しいのは当然なんです。
自分が気になっているのはそういうことではなくて、普段練習録音している段階では仕上がりに差がないようにしているのに(あくまでも自分の評価ですが)、それがなぜ本番では差が出てきてしまうのかということです(うまく説明できているのか自信がないですが……^^;)
自分の目標の一つに、本番でも普段と同じように演奏できるようにするというのがあります。
自分は今まで本番では過剰に緊張しているから普段の実力が発揮できないのであろうと、そう考えていました。
だから本番でも緊張を抑えられれば、普段の状態になるべく近づけて弾けるのではと思っていたのです。
でも今回までの経験でその認識はどうも違うのではと思えてきました。
つまり本番で演奏するときにアガっていようがなかろうが、その演奏の出来には直接作用しないのでは? ということです。
これには正直ショックでした……。
でもこれって見方を変えるとある意味『収穫』でもありました。
なぜならこの事実を踏まえたところ、おそらく個人的に今までやってこなかったある練習方法を思いつきました。
さて、それはどの程度効果があるのか?
しばらく試してみないと分かりませんね。
無駄かもしれませんが、何もやらないよりはましなはずです。
効果があれば今後他のコンクール対策と一緒に記事にするかもしれません。
とりあえず今は来月のスペインギター音楽コンクールに向けて練習するしかありませんね。
二次予選の課題曲のアルベニスのタンゴ……難しいなぁ、暗譜するのがやっとです^^;
まあ自由曲は弾くことはないと思いますが、可能性を信じて頑張りたいと思います。
ちなみに来年第27回の埼玉ギターコンクールの課題曲はJ.S.バッハのBWV996のブーレです。
おや、個人的に大好きなBWV996ですし、そこそこ練習してきたブーレなので来年も頑張りたいと思います。
多分曲の難易度的にラグリマよりは差が付きそうな気がします。
それでは今回も長々とした感想になってしまいましたがこの辺で締めたいと思います。
ご覧頂きありがとうございました。
次回以降もよろしくお願いしますm(_ _)m
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