第10回J.S.バッハ国際ギターコンクールの感想
先日4月28日に江戸川区東部フレンドホールで開催された第10回J.S.バッハ国際ギターコンクールに参加してきました。
自分は最後に出場したコンクールが去年の第9回のこのコンクールだったので、ちょうど一年ぶりの参加になりました。
1次予選のテープ審査(タンゴ第3番Op.50-3/J.フェレール)は無事に合格。
当日演奏の2次予選はソルのメヌエットOp.11-6が課題曲でした。
演奏順は当日ホールでくじ引きで決めます。
今回は14番目で順番的にはまあまあかな?(ちなみに去年は16番目でした)
とりあえず自分の結果は2次予選で落ちました。
多分このコンクールに参加する方たちはみなさんこの曲を弾くのは問題ないと思うのですが(毎年結構難しい曲が課題曲になるので今年は技術的には大分楽な方だったのでは?)、でもやはり本番になると思うようにはいかない……。
自分も止まったりはしませんでしたが、緊張で通して弾くのがやっと。ミスも多かったと思います。
でも一年半ぐらい前に初めてクラシックギターのコンクールに出た時は全く指が動かなかったので、多少は向上していると思いたいです^^;
やっぱり上手くなるためには地道に続けていくしか方法はないんでしょうね。
ちなみに今回は前回の本選に残った人や他のコンクールで入賞している人もそこそこいましたが、そういった方達も落選しているので安定して本選に残れるのはとても大変なことと改めて感じました。
順番的に後半の人の演奏しか聴けませんでしたが、個人的に予選で印象に残ったのは大蔵さんの演奏でミスなくそこそこ余裕をもって弾けていたのは彼ぐらいだったかも?
その次が最後に弾いた中国のChai CAUさんですごくいいわけではないのですが、緊張しつつも無難にまとめ上げている感じは参考になりました。
本選に残ったもう一人の中国人のHuang HanYuanさんは結構弾きミスがあったので通らないかもと思っていたのですが、音量がそこそこ出ていたので落選した他の方たちよりも印象に残ったのかもしれません。
このコンクールの予選は審査員の人達の前に壁を立てて行うブラインド審査なのでそういったところも影響あると思います。
ちなみに今回一緒に来た父は最初から全員の演奏聴いたのですが、やっぱり通しで問題なく弾けたのはほとんどいなかったそうです。でもその中で予選で一番よかったのは仲山さんだったと言っていました。
2次予選終了後はしばらく休憩して、それから集合写真を撮った後に予選の結果発表でした。
予選で舞台に上がったときもなんとなく感じていたのですが、集合写真を撮ったときに観客席を見渡すと今回は結構お客さんが多かったような気がします。
例年どのくらい来るのか分かりませんが、多分去年よりも多いと感じました。
やっぱり本番で舞台に上がったら観客の様子が伺えるぐらいの余裕が欲しいですね。
以下本選に残った方達です(演奏順)
①Chai CAUさん
②曽根知輝さん
③大蔵奏太朗さん
④Huang HanYuan
⑤横村福音さん
⑥仲山涼太さん
⑦Bianka Szalatyさん
⑧小林龍和さん
七番目のBiankaさんはポーランドの方で、バッハコンクールと提携しているチェコブルノ国際ギターコンクールで優勝したので予選無しで本選出場です。
本選は15分以内でバッハの曲を何か必ず弾かなくてはいけません(やっぱりバッハコンクールですからね)
それと自由曲はバロック時代の曲は駄目みたいです(なのでスカルラッティとかヴァイスとかヘンデルの曲は弾けない。でも例えばジュリアーニのヘンデルの主題の変奏曲とかはどうなんだろう? ジュリアーニの曲だからいいのかな?)
あとみなさんご存知の通りバッハの曲にはギターのために書かれた曲はないので、みんな編曲ものになります。なのでバッハの曲ならなんでもいいのでしょうけど、今回はプログラムを見た限り変わった曲を弾く方はいなかったみたいです。
みなさんリュート組曲かヴァイオリンかチェロの無伴奏曲から選択しています。
ちなみに自分は昔から弾いていてリュート組曲の中では一番好きなBWV996の第一番から四曲(プレリュード、アルマンド、ブーレ、ジーグ)を選びました。うーん、果たして動画投稿以外でこの組曲をまとめて披露できる機会は来るのだろうか……。
多分今回バッハの曲で一番変わった曲を弾いたのはゲスト演奏をしてくれたチェコのVLADISLAV BLAHAさんでしょう。
プログラムにはトッカータとだけあったのでどのトッカータなのかなと思っていたのですが、やはり世間で一番有名なBWV565のトッカータでした(この曲の真贋論争は興味深い)
最初聴いたときにちょっと違和感があったのでおそらく原調のニ短調ではなかったと思うのですが(イ短調あたりかな? 間違ってたらすいません……)、よく聴くオルガンのとは雰囲気が全然違うのがちょっと面白かったです。できればフーガの方も聴いてみたかったのですが、ギターにはやっぱり無理なのかな?
でも昔山下和仁さんの妹の山下尚子さんがBWV565のトッカータとフーガ弾いたって話を聞いたことがあるので編曲次第ではいけるんだろうか……。
話がそれましたが一人目は中国のChai CAUさん。
男性の方で、詳しいプロフィールは分かりませんでした。
社交的そうな方で日本語が結構上手でした。
本選の曲はBWV998のプレリュードとロドリーゴの祈りと踊りです。
一人目ということで多分結構緊張していたんだと思います。
プレリュードは慎重な感じで弾き始めました。
丁寧な演奏で悪くはないのですが、予選のときにも感じた無難にまとめ上げるという印象が強く、観客に向けてアピールするという感じではありませんでした。
続く祈りと踊りでは緊張が解れてきたのか、弾き込んでいる曲だからなのかわかりませんが、プレリュードを弾いているときよりは力強くなってきました。
しかしちょっとエンジンがかかるのが遅かったような気がします。
福田進一さんがどこかのインタビューか記事で「コンクールは最初から全力で行かないと駄目」というようなことを言っていたのをふと思い出しました。
二人目は曽根知輝さん。
現在大学生だそうでGLC学生ギターコンクールで入賞したり、先日の第5回オールジャパンギターコンクールで優勝しているなど実力者です。
曲はBWV1003のアンダンテとアレグロ、ピアソラの天使の死を演奏しました。
まずアンダンテは非常にきれいな演奏でした。目立つようなミスや躓きもなくゆったりと聴かせてくれました。これはとてもよかったです。
しかし問題は続くアレグロ。使っている版は誰のものか分かりませんでしたが、原曲にあまり音を足していない感じの編曲でした。
ここでミスが多く、なかなか苦しい演奏になってしまった気がします。
以前参加した名古屋のコンクールでもこのアレグロが本選の課題曲になっていましたが、そこでもちゃんと演奏できた人がいなかったので、この曲はギターで弾くのは譜面から受ける雰囲気よりもずっと難曲なんだと思います。
その時のコンクールの講評で審査委員長の藤井敬吾さんが「この曲が弾けたらプロ!」と言っていたのがすごく印象的で記憶に残っています。
ちなみに自分もこの曲大好きで去年のイーストエンド国際の予選で特に何も考えずに選択して弾いて撃沈しました……^^;
予選終わった後に点数聞きに行ったらまさかの最下位だったことはここだけの秘密ですw
三曲目のピアソラの天使の死は多分ブローウェル編曲のものかな?(違ったらすいません、聴いたことがあるのがブローウェル編とベニーテス編だけなので。とりあえずベニーテス編ではなかったと思います。最近だとディアンス編とかもあるらしいですね。正直ピアソラの曲は色んな人が編曲しているので誰の編曲を弾いているのかプログラムに明記してほしい)
まず演奏の良し悪しは置いておいて、個人的にこの曲(ブローウェル編)は評価し辛い。
理由の1つ目が、プロ含めて色んな人が弾いているけれど(ブローウェル本人の演奏も動画で見れますね)これだ! という演奏を聴いたことがない。
2つ目がブローウェルの編曲がどこか微妙。
あと3つ目、原曲の最初に出てくる肝心のメロディーがちょっと違う点。(これはわざとなのか採譜ミスなのかよくわかりません。でも試しにネットで調べてみたらプロの人で同じこと指摘している人がいました)
自分の印象が悪いのは、この曲に関しては原曲の方を先に聴いてしまったからなんだと思います。
原曲を聴いてもらえればわかると思いますが、この曲のいいところというか特徴はなんといっても印象的な旋律から始まりそれを他の楽器が順番にフーガみたいに模倣して掛け合いをしていくところ。それがピアソラ独特の疾走感とともに展開していく。
ギターの独奏で最初の掛け合いをそのまま再現するのはおそらく無理なので、必然的に原曲重視のアレンジはできない(と思う)。そうなると原曲の雰囲気を残しながら編曲者の個性を活かしたアレンジにするしかない。
ブローウェル編の問題は、いろいろ謎のフレーズを付け足したり技巧をこらしているもののその効果が出ていない感じがします。
これがブローウェルのオリジナル曲だったら気にならないと思うのですが……。
だから演奏時間が長くなって途中で飽きてきます。
この曲、原曲は3分ほどで終わるのにブローウェル編はみんな大体5分以上掛かります。
ベニーテス編も原曲とは大分違ってますが、それでも原曲の雰囲気は結構伝わってくるし何より上で述べた疾走感を再現している点で自分はこちらの方が好きです。あと小難しいことはしないので分かりやすいのがいい。
とりあえずこの曲に関しては多分審査する人の好みで評価が変わったんじゃないかと思います。
三人目は大蔵奏太朗さん。
彼もまだ若く現在高校生なのかな?
こちらも学生のコンクールで入賞したり、去年のイーストエンド国際で本選に残っていて演奏を聴いたのを覚えています。
曲はトゥリーナのタレガ讃歌(ガロティンとソレアレス)とBWV997のフーガ。
今度のクラシカルギターコンクールにも出るようなので、そこでの課題曲を演奏したみたいですね。
まずはタレガ讃歌の二曲から弾き始めました。
演奏は悪くはなかったのですが、ちょっと淡々と弾いていた感じです。音が軽く、あっさりしすぎかなと。
この曲はスペインの雰囲気が強く感じられる曲なので、個人的にもっと力強い演奏のほうがあっていると思います。
次のBWV997のフーガですが、これはなかなか複雑で難しい曲ですね。
BWV997の原曲はハ短調ですが、ギターで弾く場合は大体の人がイ短調にしたもので弾いていると思います。自分もイ短調で弾いています。でも時々カポを付けて原調にしている人もいるみたいですね。カポ使わないでノーマルチューニングのままハ短調で弾いている人っているのかな?
さて大蔵さんの演奏ですが、前半の49小節目ぐらいまでは順調に演奏していたのですがそこから問題の中間部、バッハ節全開の対位法を自在に駆使して一番盛り上がる所ですが、ここがやはりまだ手のうちに入って無いようで苦しそうでした。
結果的になんとか最後までたどり着いた感じの演奏になってしまいました。
でも今の段階でこれだけ弾けるので、この先まだまだ伸びていくのではないかなと思います。
四人目は中国のHuang HanYuanさん。
こちらはネットで検索するとプロフィールはよく分からなかったのですが、動画はいくつか出てきました。結構前のもっと若い頃のみたいですが、多分本人ですよね?
というのも自分が本選で聴いたのとはなんだか随分印象が違ったので……。
東京国際ギターコンクールにも以前出場したことあるみたいですね。
曲はBWV998のフーガとロドリーゴのトッカータ。
まずはフーガからです。予選のときもそうだったのですが、彼は椅子に座ってからゆっくり慎重に演奏を始めるタイプのようです。
日本人にはあまりいない?かと思いますが、外国の方だと時々チューニングなどを一切しないで座った直後に弾き始めたりする人もいるのでその辺の違いは面白いですよね。
ちなみに去年このバッハコンクールで優勝したGonzalo Ariasさんは特に早くて、本当に座った瞬間に弾き始めてましたw
フーガの演奏は若干音をはずしたりするところはあったものの全体的には悪くなかったと思います。個人的に聴かせてくれるところもありました。あと途中からは結構堂々とした演奏になってきたのは印象に残っています。
そしてその次がプログラムを見たときから気になっていたロドリーゴのトッカータです。
レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサのために作曲されたそうですが、あまりにも難しすぎて当時そのまま初演もされることなくずっと埋もれていたという曰く付きの曲。
近年ようやく出版されてそこそこ弾かれるようになりました。
自分も以前現代ギターの特集記事を読んで興味を持ち楽譜を手に入れて少し練習してみたのですが、この曲は本当に激むずでしたね^^; どうにもならなかったのでパソコンで数日間かけてmidiで打ち込んで参考音源を作ったりもしました。
どうでもいいことですが、この曲ギターよりもピアノの音源で再生した方が自然でかっこいいです。やっぱりロドリーゴの本職はピアノなんでしょうね。
でもいつの日か弾きこなしてみたいと思わせてくれるくらい魅力と内容がつまった曲でもあります。
さてHuangさんのトッカータの演奏ですがやはりちょっと厳しかったんじゃないかなーと。
通して弾けるだけでもとんでもなく凄いことなのですが、正直あそこまでミスが多いと多分音楽としてはなかなか評価されないんじゃないのかなと思います。それと難しいところ?は不自然にテンポを落としていたりもしたので、そこも気になりました。
なんとなく予想はついていたのですが、まあ世界の信じられないくらい超絶技巧の方達でも本当に厳しそうな曲ですもんね。
やはり人間をやめないとこの曲はギターでは完璧に弾けないのか……。
でもさらに余談ですが、この曲をなんと日本の中学生の女の子が弾いているとかなんとか。
しかも去年の学生コンクールでそれを弾いて優勝して、さらに台湾のコンクールでも弾いて三位になったとか。
ご存知の方も多いと思いますが、大谷恵理架さんという方ですね。
去年のイーストエンド国際で優勝(今回の本選に出ている横村さんとダブル優勝だった)したときの演奏見てましたが確かに凄かったです。
どんな感じでこのトッカータを弾くのか、ぜひ一度見てみたいです。
今度のイーストエンド国際の受賞者コンサートで演奏するのですが、そこでトッカータ弾いてくれないかな。
あと羽村市の大谷さん特集動画でせっかくコンサートでトッカータを弾いているのが流れているのになぜ音声無しなんだろう……。初めて見たとき本当に「えっ?!」という感じで唖然としましたw 著作権の問題とからしいですけど何なんだろう(ー_ー;)
前半四人の感想やっと終了。
ここから後半の四人です。
もし読んでくれている方おりましたら長くてすいません。
正直書いている自分でもここまで長くなるとは思ってませんでした……。
でもまあせっかくなのでとりあえず続けます。
五人目は横村福音さん。
彼女も高校生で若い方ですが、やはり色んなコンクールで優勝したり入賞しているかなりの実力者です。
去年のこのバッハコンクールでも本選に残っていて三位でした。
上にも書きましたが去年のイーストエンド国際では大谷さんと珍しいダブル優勝でした。
ちなみにそのコンクールでは観客が選ぶ聴衆賞というのがありますが、そちらでは横村さんの得票率が最も高く聴衆賞をもらっていました(ちなみに自分も横村さんの方に一票入れました。正直その時の演奏では甲乙付けられませんでした。なので仕方なく二人の演奏した曲で好みの方にしました)
今回の演奏曲は無伴奏チェロ組曲BWV1012のプレリュードとロドリーゴの3つのスペイン風小品からファンダンゴとサパテアードでした。
去年は2月にイーストエンド国際の凄い演奏を聴いた後にこのバッハコンクールでした。
なので本選前は優勝候補じゃないのかなーと密かに期待していたのですが、いざ始まると舞台上での顔色があまり良くなく演奏はちょっと不調だったような感じでした。
まあそれでも三位だったんですけど。
そんなこんなで一年ぶりに聴く今回の演奏はどうかなと思っていたのですが、横村さんにはいい意味で期待を裏切られました。
去年とはまるで違う迷いのない、切れのある素晴らしい演奏でした。
三曲ともその場で聴いた限りではミスらしいミスはなく、それぞれの曲の難所もまるでなかったかのように淀みなく弾き倒していました。
この時点では自分の中では横村さんが他の方にかなりの差をつけて暫定一位でした。
六人目は仲山涼太さん。
こちらも去年本選に残り、五位でした。
この方も以前から色んなコンクールに参加されていて入賞も多く、去年はスペインギター音楽コンクールで優勝されているみたいです。
演奏曲はBWV1006aのプレリュードとアグアドの序奏とロンドOp.2-2です。
ちなみに仲山さんは去年と全く同じ曲で、さらに自分も去年参加したときはこの二曲(どちらも定番曲なので珍しくはないと思いますが)を選んでもろ被りだったので非常に印象が強く残っております。生まれた年も一緒(学年的には一つ上かな?)なので何か縁があるのかもしれません。
演奏前はスペインのコンクールで優勝されたこともあり、一年経ってどんな感じになったのかなと仲山さんにも横村さん同様期待しておりました。
ただ先に述べておくと、正直自分としては仲山さんに関しては二曲とも去年とあまり変わったなという印象は持てませんでした。おそらく仲山さんの弾いた二曲が自分も思い入れのある曲なので、他の方よりもどうしても厳しい見方になってしまうからだと思います。
まずプレリュードの方ですが、特に目立ったミスはなかったと思います。
でも出てくる音がちょっと硬いような気がしました(これはロンドを弾いているときにも感じました)。この辺は多分聴いている人によって好みが分かれるかと思います。
自分はあまり好みではありません。
続く序奏とロンドの序奏部分(アンダンテのところ)は出だしは力強くてよかったと思います。
ロンドに入ってからもしばらくはそれなりに順調。
ただ中間部から後半部にかけてのあの急速な三連符のフレーズが苦しいというか少々もたついてしまったのは惜しいかなと思いました。
それよりも気になったのが、曲全体を通して演奏がずっと張り詰めているような緊張状態で余裕があまり感じられなかった点です。
なので残念ながら演奏を聴き込んで楽しむということはできませんでした。
七人目はBianka Szalatyさん。
上でも書きましたが、バッハコンクールと提携しているチェコのコンクールで優勝して参加されたそうで今回唯一予選免除で本選に出場しております。
事前に気になったのでどんな方なのかちょっと調べてみました。
とりあえず動画で視聴した限りですが、やはり確かな演奏技術をお持ちの方のようです。
容姿も大変綺麗な方で遠目にはモデルさんみたいでした。
売り出し方とかを見ると多分もうプロとして活動されている方ですよね。
CDも出していて、色んなリサイタルも開いているみたいだし。
演奏した曲はBWV1005のラルゴとアレグロアッサイ、ファリャの恋は魔術師より恐怖の踊り、火祭の踊り(両曲自編?)、ヴィラ=ロボスのエチュード12番です。
他の方と比べると選んだ曲にちょっと多様性があります。
国内のコンクールはそこまで顕著ではありませんが、海外のコンクールだと色んなジャンルの曲が弾けるかみたいなところも評価されるみたいですね。
国内だと東京国際の本選は自由曲に時代の指定がありますね。
その辺りも他の本選の方と比べると意識の違いが感じられるような気がします。
さて実際の演奏のほうですが、出来栄えは圧倒的でした。
どの曲も一音一音手抜かりなく綺麗にホールに響き渡っていたと思います。
正直動画で視聴した時はそれほど興味を惹かれなかったのですが、実際の演奏はまるで迫力が違っていて凄かったです。
隣で聴いていた父も、今日演奏した人の中で一人だけプロがいたと絶賛でした。
最後の八人目は小林龍和さん。
この方も若い方でまだ高校生みたいです。
学生のコンクールで入賞しており、去年のスペインギター音楽コンクールで五位に入っているようです。
演奏曲はBWV1000のフーガとソルの魔笛の主題による変奏曲Op.9の二曲。
本選の演奏もくじ引きで決まりますので仕方がないと思うのですが、正直に申しますとどうしても彼の前に横村さんやBiankaさんが演奏してしまっているのでフーガはともかく自由曲が魔笛の一曲だけだと上位入賞は厳しいのではと感じていました。
ですが今回個人的に一番興味深いといいますか、また今後も聴いてみたいなと思う演奏をしてくれたのは彼でした。
先に弾いたフーガは細かいミスはありましたが、非常にきれいな演奏を聴かせてくれました。続く魔笛も素晴らしい演奏で非常に聴き入ることができました。
多分好みが分かれるところだと思います。人によってはつまらないと感じるかもしれませんが、彼のような癖のない素直な感じの演奏が自分は好みです。
なので今後注目したい奏者の一人になりました。
ここまでで本選の演奏が全員分終了。
その後審査結果が発表されるまでしばらく隣の父と意見を交わし、それを踏まえた上で自分で順位を付けるとしたらおおよそ以下ような感じでした(とりあえずこれはかなり自分の趣向を含んでおります)
①Bianka Szalaty
②横村福音
③小林龍和
④Huang HanYuan
⑤仲山涼太
⑥Chai CAU
⑦曽根知輝
⑧大蔵奏太朗
一位は悩みましたが、Biankaさんと横村さんの二人の演奏が飛び抜けていたので多分どちらかが一位だろうと。
父は横村さんも凄かったが、まだ演奏が若いと感じたらしいので今回はBiankaさんを一位、横村さんが二位と予想。
三位は今回個人的に一押しの小林さん。
あと小林さんは上位二人以外の六人の中ではおそらく目立つようなミスが一番少なかったであろうことも考慮しました。
四位はHuang HanYuanさん。
トッカータの弾きミスはかなり多かったと思うのですが、今回一番の超難曲に挑戦したという点から評価は多少加点はされそうな気がしたので。
あとの五位から八位の人達はちょっとはっきりと決めるのが難しかったです。
なのでこの中で多少順位が入れ替わっても不思議ではありませんでした。
そして結果はというと以下の通りに(ちなみにこれを書いている現在バッハギター協会のサイトの速報順位では大蔵さんが六位で小林さんが七位になっています。後から順位が変更になるということはないと思うのですが、違っているのはお二方だけなのでとりあえず当日自分がメモした通りの順位で話を進めます)
①Bianka Szalaty
①仲山涼太
②横村福音
③Huang HanYuan
④Chai CAU
⑤曽根知輝
⑥小林龍和
⑦大蔵奏太朗
なんと一位が二人という結果に。
最下位から発表するという説明のあとに「七位……」という発表の仕方をしたので、この時点で変だなと感じました。ひょっとして同じ順位が二人いるのかなと思ったら本当にそうでした。
でもさすがに一位だとは思いませんでした。
今までコンクール(ギター以外も)を色々観戦して観客として審査結果に概ね納得のいく場合と疑問が残る場合がありましたが、残念ながら今回は後者でした。
まあ自分が本選に残ったわけでもないですし、こればっかりは運営上仕方ないと思うのですが、一応簡単に検証はしてみたいと思います。
まず七位の大蔵さん。
まあこの中では仕方がないのかなと。
フーガの出来はともかく、タレガ讃歌の二曲はもうちょっとアピールできたんじゃないかなと思いますので。
六位の小林さん。
やはりコンクール的には自由曲が魔笛だけだと弱かったんでしょうかね。
かといって時間的に他に何か別の曲をやるというのも厳しい。
選曲の差が出たということでしょうか。
五位の曽根さん。
ピアソラの曲の反応はどうだったのか?
でもおそらくアレグロのミスが少なければ三位か四位には届いたかも。
四位のChai CAUさん。
全体的にミスが少なかったので課題曲になっているバッハの曲でもう少し難しい曲に挑戦していれば三位に入れたかもしれません。
三位のHuang HanYuanさん。
Chai CAUさんとは違ってやはり挑戦的な姿勢が評価されたのかもしれない。
ただ難曲でもそれなりに常識的な曲にしていればBiankaさんや横村さんと技術的に競えた気はします。
二位の横村さん。
うーん、とても惜しい。去年この演奏ができていたら多分優勝できていたんじゃないかと思います。今回のBiankaさんはちょっと相手が悪かったかもしれません。来年こそは優勝して欲しい。
一位はまずBiankaさんから。
今回文句なしによかったです。やはり国内組と海外のコンクールで上位入賞している人との差を感じてしまいます。
最後にもう一人の一位の仲山さん。
貶すつもりがあるわけではないのですが、彼がBiankaさんや横村さんと同じ水準の演奏をしていたかと言われると甚だ疑問です。三位ぐらいだったらまだ納得いくのですが……。
何はともあれ受賞された皆さんおめでとうございました。
以上が本選の演奏の感想になります。
さてここからは今回のコンクールで気になった点をいくつか述べてみたいと思います。
まず2次予選の曲のソルのメヌエットOp.11-6に関して。
ここにこの感想を見に来る方はみなさんご存知だと思いますが、この曲は二部形式です。
前半と後半にそれぞれ繰り返しがあるわけですが、それがなんと当日受け付けのところで各自に本番では繰り返し無しで弾いてくださいと伝えられました(今回事前の注意事項やプログラムにも繰り返しに関してはなにも言及されていません)
うーん、それってどうなんでしょう?
控室でも当日いきなり言われてもなーという感じで他の人とも話題になりました。
この曲テンポにもよりますが、繰り返しありで全部弾いてもせいぜい2~3分の曲です。
なので予選に参加した方達は多分ほとんど疑うことなく繰り返し有りで練習されてきたと思います。
これは人にもよると思いますが、本番の演奏の出来に多少影響したんじゃないでしょうか。
まあ当日対応できるか審査したとか言われてしまうとそれまでなんですが(そんな意地悪なコンクールあるのかな?)、大体のコンクールでは繰り返しについてはきちんと明記されていますので、その辺は事前にはっきりしておいて欲しいと思います。
ちなみに参考までに別のコンクールのことを述べますと、本番数日前にわざわざ参加者全員にそれぞれ電話連絡で課題曲は繰り返し無しで弾いてくださいと変更を伝えてきたコンクールが以前ありました。これならまだ対応できますね。
二つ目、一位が二名選出された件について。
あくまで個人的な意見ですが、今回のコンクールのように審査の結果優劣をつけられないからといっても一位を二名選出するのはいかがなものかという気がします。
まず賞金と賞品の問題。
今回トロフィーと賞状は2名分用意することになったそうですが、賞金はBiankaさんに、賞品のギターは仲山さんに授与されました。
せっかく一位という栄誉を得たのに、得られるものは山分けというのは納得できるんでしょうか。もし自分が同じ立場になったら……多分落胆すると思います^^;
まあ高額ならともかく、三十万ぐらいの賞金とそれ相応の賞品だけ目当てで奮起してわざわざギターのコンクールに出場する人はあまりいない? と思ったりもしますので一位という結果が得られれば十分だよって人もいるのかな。
あと一位だと次回以降同じコンクールに参加できなくなるという点。
注意事項にはっきり明記しているとこは少ないと思うのですが、こういったアマチュア向けの一般のコンクールで優勝したら普通次回以降出場できませんよね。
そうなるともし「なんで自分が単独の一位じゃないんだ」とか「自分は一位の演奏に相応しくなかった」とか思ってても納得出来ないまま終わってしまいます。
ひょっとしたら来年以降も挑戦したいと思う人がいても不思議ではないと思います。
でもその場合もし無理やり出ようとしても周りから前回優勝してるだろという意見が出てしまうはず。
スポーツの大会とか学生の吹奏楽コンクールみたいに何連覇してもOKみたいなコンクールってあるのかな?
まあ受賞を辞退すれば次回以降も参加出来るかもしれませんが、それはそれで勇気がいりますよね……。
なので滅多に起こらないこととはいえ、こういった場合に備えて確実に1,2,3位を重複しないで選出できる仕組みも必要なのではと思ったりもします。
三つ目、ドレスコードの話。
これは最後講評のところでちょっとだけ触れた件です。
なんでも舞台に上がるのにふさわしくない格好の人がいたとかなんとか。
まあ本当にさらりと触れたので、どの人がとか具体的な話題ではなかったのですがちょっと気になったもので。
男性についてはほとんどの人がワイシャツにスラックス姿で、ジャケットは着る着ない別れますがそこまで変な格好をしている人はいなかったと思います。
ネクタイがどうこうとも言ってたのでそのあたりのことなんでしょうか。
あと次回第11回の応募要項も冊子にありました。
第11回は2020年4月26日に会場変更でタワーホール船堀で行われるそうです。
課題曲は一次予選がソルのラルゲットOp.35-3。
二次予選がタレガのアラビア風奇想曲になってます。
どちらもおなじみの曲で他のコンクールでも課題曲になったりしてますね。
本選の要項は今年と同じみたいです。
そのうちバッハギター協会のサイトに正式なものが載ると思いますので気になる方は確認お願いします。
最後に。
うーん、非常に長くなってしまいました。
読みづらくてすいません。
これでも途中文章をかなり削りました。
好きなだけ述べられるといっても、書きたいこと思っていること全部あげたらやっぱり切りがないですね。
次回以降観戦記をあげるときはもう少し考えてみたいと思います。
それと今度参加予定のイーストエンド国際も近いので練習頑張らないとですね(本来こんなことをしている暇はない……^^;)
それではここまで読んでくださった方おりましたら本当にありがとうございました。
次回以降もよろしくおねがいしますm(_ _)m
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